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甲3号証

甲3号証(原告:松井氏提出書類)

本件訴訟は2007年3月に第一審判決が言い渡され、既に確定しています。このページは、ネット上の表現を巡る紛争の記録として、そのままの形で残しているものです。

中西準子様

あなたのホームペイジを見ました。感想を述べます。

環境省があなたにコーデイネーターとして依頼した

「シンポジウム」は、波乱無く終わったようですが、あなたの雑感を読み、呆れています。コーデイネーターとしての「公平性」を最初から、捨てて、あなたの独善的主張が、さらけ出された雑感です。

———環境ホルモン問題のリスクコミュニケーションの功罪をきちんと整理すべき時に来ているーーとのことですが、「功罪」とは何ですか? 何を持って「功」で何も って「罪」ですか? 公平な議論は、内分泌撹乱物質の研究の成果が何であって、何が分り、何が引き続き研究必要かであります。その点を、明確にせずに、一方的に 断じているだけです。

——引用箇所——パネリストの一人として参加していた、京都大学工学系研究科教授 の松井三郎さんが、新聞記事のスライドを見せて、「つぎはナノです」と言ったのには驚いた。要するに環境ホルモンは終わった、今度はナノ粒子の有害性を問題にしよ うという意味である。

————この表現は、私に対する侮辱ですか? シンポジウムの打ち合わせ会議で、 私が、新しく設立した京都大学大学院地球環境学堂に所属していることを、山形氏、 日垣氏と名刺交換の時、あなたの目の前で詳しく「学堂」の意味を説明しました。上の空で聞いていたのですか?

次に、私の15分間のプレゼンテーションを、あなたは頭から聞かずに、無視をしていたのですか? 私のプレゼンターションは以下の流れです。この3年間で急速に 進歩した、遺伝子マイクロアレーの技術は、ヒトの遺伝子=約28、500強が活性化、抑制化、中立という理解で、評価できる事になったことを紹介した後、ダイオキシン=TCDDの遺伝子レベルでの有害性を、解明するよき参照として、人の尿中に存在するインデイルビンと比較した紹介をしました。この時、なぜ人尿に意味があるかは、下水道、合併浄化槽(あなたが推薦している)に問題があることを加えました。 TCDDとインデイルビンは、ヒト肝臓癌細胞の1176個の主要遺伝子の動きを比較した結果、殆ど同じ種類の遺伝子を同じように活性化していることを解明したと説明しました。どこに有害性があるか解明する必要があります。

そのことから、有害性の真の原因は、TCDDが細胞から排除されにくく、インデイル ビンはCYP1A1等の酵素誘導で酸化を受けさらに硫酸抱合体などになって、細胞外、人尿中に排泄される点を指摘しました。この点をあなたは、理解していないか、無視しているようです。TCDDの代わりに発癌性が明確なベンゾ(a)ピレンを使い、AhR(多環芳香族受容体=ダイオキシン受容体)に受容されたベンゾ(a)ピレンが、どのような機構で動き(環境ホルモンと発癌性の関係性の明確な説明)受容体から離れた後に酸化、還元を受けその間、スーパーオキシドを誘導し酸化態遺伝子付加体を形成し、遺伝子損傷の原因となるか重要な説明をしました。あなたが、研究している発癌リスクの根本機構を説明したわけです。TCDDは細胞から排除されにくい間に、遺伝子を過剰に動かし、CYP1A1,CYP19等ステロイドから女性ホルモン生成に関係する遺伝子が過剰に動く危険性を指摘しました。次に指摘したのは、ナノ粒子フラーレンは、AhR(多環芳香族受容体=ダイオキシン受容体)で認識されないなら、一度細胞内に侵入すると細胞外に排除される機構が存在しない危険性を指摘したのであって。———決して次のような発言はしていません。
———引用 「つぎはナノです」と言ったのには驚いた、要するに環境ホルモンは終わった、今度はナノ粒子の有害性を問題にしようという意味である。———引用終わり

これは、あなたが意図的に、このように発言しているのですか?もし意図的でなければ、あなたは、私の講演を、よく理解できなかった学者である証明です。

———引用——

スライドに出た記事が、何新聞の記事かは分からなかったし、見出しも、よく分からなかった(私の後ろにスクリーンがあり)ナノ粒子の有害性のような記事だったが、 詳しくは分からなかった(読みとれなかった)。ーー

答えます

京都新聞。2004年8月28日夕刊のトップ記事です。

ナノ粒子を述べているのは、環境ホルモンの研究成果からナノ粒子の危険性が疑われるので、研究する必要があると説明したので、———引用—要するに環境ホルモンは終わったーーーこの表現は、あなたの意図的歪曲か? 或いはあなたが理解できないことの証明です。ナノ粒子の問題は、2年前に既に京都大学の名の粒子を癌治療に役 立てる研究の教授とも相談しました。現在、ナノ粒子が細胞外に排出される機構を研究している研究者は日本でおられません。

> ——引用———学者が、他の人に伝える時、新聞の記事そのままではおかしい。新聞にこう書いてあるが、自分はこう思うとか、新聞の通りだと思うとか、そういう情報発信こそすべきではないか。情報の第一報は大きな影響を与える、専門家や学者は、その際、新聞やTVの記事ではなく、自分で読んで伝えてほしい。でなければ、専門家でない。

答えます。私はあなたの目の前で、私の研究室で独自に解明したダイオキシンに関係する結果を、直接説明しました。これほど直接で責任ある発言はありません。あなたこそ、人の講演をよく聞かないで、独善の言説を述べていませんか?

このメイルを友人に配信するため、あなたと私の重要な関係を一言、付け加えます。

文部科学省特定領域研究班「内分泌撹乱物質の環境リスク評価」の、計画研究と公募研究の審査委員になっていただき、応募採択に参画していただいたことは、手紙で御礼申しあげました。また、そのことは、このシンポジウムの打ち合わせ会の時にも。御礼しました。お陰で、最終評価委員会における研究班の評価は「A」で、所期の目的を達成したと高く評価を受けました。 この研究は、日本の科学界において、化学物質の安全性を研究するに当たり、医学、薬学、理学、農学、工学の縦割りの弊害をなくし、学会や学部の壁を破り大学院生が自由に行き来して最新の知見を交換する目的がありました。幸い文部科学省の理解と支持を得ました。特定領域研究班としての活動を認められたのは、当時理工学委員会審査委員長の野依教授(ノーベル賞 受賞の前の段階)の判断も大きく係わっています。お陰で100名近い新分野を切り 開く博士号取得者をこの研究班で生み出すことができました。このことは、内分泌撹乱研究の国際競争においても大きく前進させることができました。最終評価委員会は、さらに研究成果をもっと多くの国民に知らせるようにと要望が出されました。

このような3年間の研究成果の概要を示す研究発表論文集や、文部科学省評価委員会に提出した書類1式は、中西さんのお手元に郵送しました。このこともシンポ ジウムの打ち合わせ会で確確認し、御礼申し上げました。一体あなたは、研究成果を読んでいただいたのでしょうか?

シンポジウムの私の講演の冒頭申したことは、内分泌撹乱物質の研究で、「わからな いことがいかに多いかということが分ったという」ーー上家課長の言葉を引用しました。

我々科学者は、生命の秘密に触れて、いかに無知であるかを知っています。遺伝子マイクロアレーの技術もそれを,示すものです。

科学者の役割は、「無知」を「理知」に変える努力です。内分泌撹乱物質の研究によ って分ったことの重要点は、化学物質の影響を様々なエンドポイントで見ることができることです。発癌性だけが、エンドポイントではありません。「死」だけがエンド ポイントではありません。全き姿で生まれてくる新しい命を保障することも科学者の責任です。中西準子様